アスリートが風邪をひきやすいのはなぜ?感染症を防ぐために必要な食事と習慣とは?
本記事では、スポーツ現場での栄養サポートを実践してきた管理栄養士が、「感染対策」「免疫力アップの食事」「アスリート特有の注意点」を科学的根拠に基づいて解説します。
感染症とは?アスリートが気をつけるべき病原体
「感染症」とは、ウイルス・細菌・カビ・原虫などの病原体が体内に侵入し、発育・増殖することで症状を引き起こす病気です。
風邪や胃腸炎も感染症の一種であり、その原因となる病原体は200種類以上あると言われています。特定は難しいため、「予防」と「免疫力の維持」が最も重要な対策です。
主な感染経路と日常でできる予防法
感染症には、以下の4つの経路があります。
接触感染
手を洗わずに目・鼻・口に触れることで感染。
→手洗い、アルコール消毒が必須。
飛沫感染
咳・くしゃみで飛んだ飛沫により感染。
→マスク着用、人との距離確保が基本。
空気感染
空気中を漂う微粒子を吸い込むことで感染。
→換気の徹底、空間密度を下げる。
媒介物感染
食べ物や虫、ペットなどを通じた感染。
→食品は加熱・洗浄、虫除けも重要。
アスリートは遠征や合宿で集団生活を送ることも多く、上記すべての感染経路に注意が必要です。
なぜアスリートは風邪をひきやすいのか?
「体力があるから免疫力も高い」と思われがちですが、実はその逆。アスリートは日常的にハードなトレーニングをしており、エネルギーが消耗されやすく、免疫機能が低下している状態になりがちです。
免疫力が下がる主な原因
- 高強度・長時間の運動
- 減量や脱水
- 移動や環境の変化
- 睡眠不足やホルモンバランスの乱れ(特に成長期・女性アスリート)
免疫機能を支える「食事」とは?
免疫力を維持・向上させるには、日々の食事がもっとも重要な要素です。
免疫に関わる栄養素5選
栄養素 | 主な働き | 多く含む食品 |
---|---|---|
ビタミンA | 粘膜の健康を守る | にんじん、レバー、卵 |
ビタミンC | 抗酸化作用、免疫細胞活性化 | 柑橘類、ブロッコリー |
ビタミンD | 抗菌作用、免疫調整 | 鮭、きのこ、日光浴 |
ビタミンE | 抗酸化、免疫細胞保護 | ナッツ、植物油 |
亜鉛 | 免疫細胞の形成 | 牡蠣、赤身肉、ナッツ |
腸内環境を整える=免疫力を守る第一歩
腸は「最大の免疫器官」と言われ、外界とつながっている臓器です。アスリートにとっては、過度なトレーニングやストレスにより腸がダメージを受けやすく、ウイルスや細菌が侵入しやすくなります。
腸内環境悪化のリスク
- 同じ食品ばかり摂る(腸内細菌の多様性低下)
- トレーニングによる細胞の損傷
- ストレスや不規則な生活
腸を整える食習慣
- 発酵食品(納豆、ヨーグルト、キムチなど)を毎日取り入れる
- 多様な野菜や果物を食べる(食物繊維+ビタミン)
- 規則正しい生活、ストレスケアを意識する
アスリートの栄養戦略:体調を崩さない食べ方
日々の栄養管理では、「十分なエネルギー摂取」が大前提です。JISS式による計算では、除脂肪体重×28.5×身体活動レベル(1.5〜2.0)で、アスリートに必要な1日のエネルギー量を算出できます。
食事の工夫ポイント
- 1食で無理に詰め込まず、補食(間食)を活用
- 炭水化物+たんぱく質の組み合わせを意識(例:おにぎり+チーズ)
- 練習後は15分以内に糖質補給(筋グリコーゲンのリカバリー)
風邪をひいたときの正しい対応と復帰方法
感染してしまった場合、無理な運動は禁物です。免疫機能は多くのエネルギーを必要とするため、休養・栄養補給・水分摂取が最優先です。
回復時のポイント
- 体温上昇で基礎代謝も上がる → 食事量は減らさない
- 水分も通常以上に必要 → スポーツドリンクなどでこまめに補給
- 練習復帰は短時間・低強度から始める
まとめ:感染症から身を守る「攻めの体調管理」を
アスリートにとって、感染症対策はパフォーマンス維持のための“守り”であり“攻め”でもあります。毎日の手洗いやマスクだけでなく、食事、睡眠、ストレス管理、腸内環境の整備など、体調をトータルでマネジメントすることが重要です。
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